甲状腺の病気について
1甲状腺とは
- 甲状腺は、のどぼとけ(喉頭隆起)の下方にあります。横径4cmで重さ15-20gの軟らかい臓器です。普通は見たり触れたりできませんが、大きくなったり硬くなると、眼に見え手で触れるようになります。眼に見えたり、触って分かるのは甲状腺に何か異常があることを示しています。
- 甲状腺からは甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)と、トリヨードサイロニン(T3)が分泌されています。また、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を調節しています。
2甲状腺ホルモンの働きは
- 甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝や活動を活発にする働きをしています。ホルモンが多すぎると、身心の働きが活発になり、走っている状態になります。不足すると、身心の働きが低下し、子供では体や脳の発育が悪くなります。
3甲状腺の病気の種類は
- 甲状腺の病気は大きく分けると、①甲状腺ホルモンの働きが多すぎる甲状腺機能亢進症、②甲状腺ホルモンの働きが少なすぎる甲状腺機能低下症、③甲状腺腫瘍の3種類があります。
4甲状腺機能亢進症(代表的疾患;バセドウ病)
- 甲状腺機能亢進症の原因の殆どがバセドウ病ですが、他の原因でもよく似た状態になることがあるので、最初にきちんと区別して診断することが大切です。
- バセドウ病に特徴的な症状は、甲状腺の腫れ、突眼、および甲状腺機能亢進症状です。機能亢進の症状は、動悸がする、脈が速い、汗が多い、痩せる、いらいらする、手が振るえる、熱が出る、疲れやすい、血中コレステロール低下等です。
治療をしないで放置すると、心不全などの重い病気を起こすことがあり危険です。
- 診断は、甲状腺腫大と血中の甲状腺関係のホルモンを測定します。
- 治療法には、抗甲状腺薬を内服する薬物治療、甲状腺を切除する外科治療、放射性ヨウ素を内服する放射線治療などがあります。それぞれに長所と短所がありますので、主治医とよく相談して治療法を選ぶとよいでしょう。
6甲状腺腫瘍
- 原因の殆どは慢性甲状腺炎で、橋本病とも呼びます。日本人の橋本策博士が発見しました。
- 甲状腺機能低下症の症状は、身心とも元気がなくなります。疲れやすい、気力・活力の低下、思考力・記憶力・集中力の低下、便秘、血中コレステロールの増加などです。
進行すると、むくみで体重が増え、体温が低下し寒がりとなり、脈拍数が減り、心臓が腫れます。甲状腺は腫大し硬くなるため、眼に見え触れるようになります。ひどくなれば、心不全や昏睡などで重症になり危険です。
- ゆっくり進行し特徴のない症状が多いため、気付くのが遅れがちです。認知症やうつ病に間違われることもあります。
- 診断は、甲状腺腫大と血中の甲状腺関係のホルモンなどを測定します。
- 治療は、症状や甲状腺ホルモンの不足の程度に応じて、甲状腺ホルモン剤を服用します。
5甲状腺機能低下症(代表的疾患;慢性甲状腺炎)
- 甲状腺にできる「しこり」で、良性と悪性(がん)がありますが、大半が良性です。
良性腫瘍の場合、小さければ手術などの外科治療の必要はなく、経過を観察します。一方、超音波検査等で悪性が疑われる場合には、診断をするために細胞診検査を行います。
甲状腺の悪性腫瘍には、乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫などがありますが、日本では悪性腫瘍の90%以上を乳頭癌が占めています。
- 治療は、良性であれば、圧迫症状や美容的な問題が無ければ経過観察となります。ただし、濾胞癌などの悪性腫瘍が疑われる場合は手術が勧められます。
悪性腫瘍のうち、最も頻度の多い乳頭癌は、比較的予後のよい癌ですが、第一選択は手術です。腫瘍の最大径が1cm以下の乳頭癌を微小乳頭癌と言います。
リンパ節転移や周囲組織に浸潤していない低リスク微小乳頭癌については、手術をせず経過観察するのが得策でしょう。濾胞癌と髄様癌についても治療の基本は手術です。
悪性リンパ腫では抗がん剤による化学療法や放射線治療を行います。非常に悪性度の高い未分化癌では、手術だけでなく化学療法や放射線治療などが試みられています。
医療機関について
日本甲状腺学会のサイト内で認定医専門医施設ならびに専門医が紹介されていますのでご確認ください。
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